旅館の近くに、大淵先生の姿が見えた。
一段高くなっている道路を腰かけ代わりに大淵先生は制作に余念が無かった。
すでにキャンバス上には、大淵色とも言うべき青紫系の島と海、そして手前には小菊が色とりどりに描かれていた。
「昨日、島をあちこち廻ったのですが、ここが一番良いと思いましてね。
朝のうちは島の色がもっときれいだったんですよ」
と大淵先生。
「このあたりはとてもきれいですが、他に良い所は無いですかね」
と私。
「それでは、島で一番高い城山へ行きましょう」
と旅館のご主人は左右に海が見える山の尾根の列にそって細い道を先へ歩き出した。
「こうして坂道を歩くのも生活の一つになってしまいますね。
足の裏から春の感じが伝わって来るんですよ。
かちかちした土が春が近づくとふわっと柔らかくなるんですなあ」
右手に真鍋城跡の石垣を見ながら進んだ。
道は険しくなり、やがて人の歩いた跡の無い道無き道となった。
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ご主人の話は続いた。
「すでに春の雰囲気ですなあ。
海の光り方も、
四国の山々のぼんやりした感じ、
それに足元の縁も春が来つつある事を感じさせますなあ」
「木々も緑の葉は無いけれど、
もう芽ぶいていて、
冬とは異なって見えるんです」
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「夕映えの公園」 F6号 |

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城山(127m)、真鍋城址
あたりより望む真鍋島港。
もう一つの港、岩坪港も
城山からきれいに見える。
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